私の趣味はアンダーソン土器のコレクション
 
  この趣味は、正しくはアンダーソン土器のコレクションであったと過去形で言うべきかもしれない。なぜならこのコレクションは私が北京に居たころ集めたものであるからである。北京から帰国後も二度ほど北京にこの土器を買いに行ったが、今では北京に行くこともなく、買う資金も無くなってしまったので過去形で言った方がいいのかもしれない。

 しかし最近になって私の集めたものは、まさにコレクションではないかと思えるようになった。コレクションとは単に収集するだけでな、広く集めるという意味がある。私の場合、広く集めるという意味は、数をたくさん集めると言う意味ではなく、アンダーソン土器のいろいろな時代の土器を集めたのである。




 アンダーソン土器が出土するのは中国甘粛省のあたりであって、このあたりには、かって○○文化とか、××文化とか、△△文化とか、様々な文化が栄えていて、文化という名前で考古学上の年代が区分されている。ここでいう文化とは日本でならば縄文文化とか弥生文化というその文化である。



 ところでこういうものを集めていると人にいうと、「なんでも鑑定団」に持っていって鑑定してもらったらいいなんて言う人がいる。その人はなんでも鑑定団は何でも鑑定できると思っている点で間違っている。そして私よりなんでも鑑定団の先生の方が、アンダーソン土器についてよく知っていると思っている点でも間違っている。私に関して言えばなんでも鑑定団の先生にアンダーソン土器について鑑定してもらう必要は全くないのである。(ただしこの土器が幾らぐらいで売れるかという鑑定は、何でも鑑定団の先生の方が当たっているかもしれない)



 だいぶ前の事であるがなんでも鑑定団」にアンダーソン土器が出品されたことがある。そして鑑定団の先生の鑑定では、「これはアンダーソン土器というものである、そして仰韶(ぎょうしょう)土器とも言う」なんて鑑定していた。それはアンダーソン土器だという部分は正しいが、仰韶土器とも言うという部分は完全に間違いである。仰韶文化の時代の土器であるという意味だと思うが、仰韶文化にはアンダーソン土器は出土しないし、アンダーソン土器が出土する場所は、仰韶文化と時代も距離もかなり離れている。鑑定団の先生は中国の考古学上の鑑定ができないことは明らかである。



 そもそもアンダーソン土器といういい方は、アンダーソン博士が中国にも土器があることを発見して、アンダーソン博士が最初に発見した土器だということで、それらの土器をアンダーソン土器と言い出したのは、日本の骨董屋だと思える。実際に中国に行ってみて、中国の考古学の本を見てみても、中国の骨董屋と話してみてもアンダーソン土器なんて言葉は全く出てこない。この土器が出土する中国では、アンダーソン土器と言っても全く通じないのである。アンダーソ博士が発見した土器と意味に相当する言葉は中国語にはない。では中国北京の骨董屋はどういう言って商売をするかというと、「これは馬家窯(文化)の半山タイプの彩陶で、いいものだから今買わないと売れてしまうよ」なんて言って商売をしているのである。つまり考古学上の文化年代を言って商売をしているのである。ちなみに中国語には土器という言葉もない。日本語の土器は中国語では陶器の一部なのである。前出の中国の骨董屋が言った言葉で彩陶、とは本来の意味からすると彩文のある陶器を意味していると思われるが、狭い意味の彩陶とは、現代の彩文のある皿などではなく、新石器時代や青銅器時代の出土物を言うようである。

 ちなみに私は東京国立博物館にアンダーソン土器が収蔵されているのを発見したのであるが、そのことを発見できたのは東京国立博物館の収蔵品の画像検索で「彩陶」という言葉で検索したから検索できたのであって、日本の骨董屋がいうアンダーソン土器などいう言葉では検索できなかった。

 なんでも鑑定団はなんでも鑑定できるかという話に話を戻すと、アンダーソン土器についていえば、その土器がアンダーソン土器であったとしても、何々の文化に属する土器であるのかという考古学上の鑑定は、日本の骨董屋(なんでも鑑定団の先生を含めて)ではできないと思う。さらに言えばどの文化と、どの文化がアンダーソン博士が発見した文化のかと聞いても、これも答えられないと思う。アンダーソン博士が発見した文化は数々あるのだが、アンダーソン博士が発見にかかわらなかった文化も多い。だからアンダーソン土器だと言い当てるには、それは何んと言う文化の彩陶なのかを判別して、次にその文化はアンダーソン博士が発見した文化であるのかどうかが分かって初めて、その土器がアンダーソン土器と鑑定できるのである。

 できるなら下の土器のうちどれがアンダーソン土器であるか鑑定していただき、ついでにその土器が属する文化についても鑑定いただきたい。


 そもそもアンダーソン博士がどの文化を発見したかにについては、日本語の文献ではわからないのではないだろうか。私は北京の書店で中国語の「謝端琚著“甘青地区史前考古”文物出版社2002年発行」を見つけて、それに書いてあるのを読んで、アンダーソン博士が発見した文化の範囲を知ったのである。そして私のアンダーソン土器のコレクションは、アンダーソン博士が発見した文化毎に分けて広くコレクションをしたのである。そう言った意味で広く集めたコレクションであると思う。


アンダーソン土器の文化による分類
馬家窯文化
馬家窯タイプ
馬家窯文化
半山タイプ
馬家窯文化
馬廠タイプ
斉家文化
辛店文化
アンダーソン土器以前
の6000年前の土器


 下の図は謝端琚の“甘青地区史前考古”という中国語の本を見て図にしたものである。オレンジ色の文化がアンダーソン博士が発見した文化である。

しかし沙井文化とka約文化のの土器だけは買えなかった、この文化の土器は出土例がほとんどなくて、骨董屋には無かったからである。

 ここで北京の骨董屋についてであるが「これは馬家窯(文化)の彩陶で、本物だ」と言って、アンダーソン土器を北京で売っている骨董屋は、普通の骨董屋ではない。新石器時代の文化の名前を使い分けて商売をしているくらいだから、アンダーソン土器(≒彩陶)専門の骨董屋である。ほとんどが回族というイスラム教徒の少数民族である。なぜイスラム教徒の回族がアンダーソン土器を売っているかというその事情は「アンダーソン土器とは」というページに書いてあるのでそれを読んでいただければ分かる。私がアンダーソン土器を収集できたのはイスラム教徒の回族の骨董屋と知り合いになったからである。彼らのアジトまで言って沢山の彩陶を見ることができた。下の写真は中国の骨董屋のアジトに保存されていて買い手を待っているアンダーソン土器の数々。



 「なんでも鑑定団」的な観点から見れば、それは偽物ではないのか、金銭的価値は幾らぐらいなのかのということになるかと思う。私のコレクションの中に偽物は無いと思う。本物が展示された地方(甘粛省や青海省、北京から飛行機でなければ行けない)の博物館を5か所は見に行ったし、北京にある彩陶博物館も何回か見に行った。中国語の彩陶の図鑑を何冊か買ってきた。それに中国の骨董屋から真贋の識別法も教えてもらった。それだけの理由で真贋を判別できるとは言えないが、私はアンダーソン土器の真贋を区別できると思う。更に日本の骨董屋が鑑定できない○○文化のものだという文化での鑑定もできる。実はその骨董屋からは何度も偽物を買わされたことがあるのだが、今では騙されたことはない。

 金銭的価値から言えば、一般的に言えばアンダーソン土器は沢山出土する、日本の縄文土器などよりずっと多く出土する。その点で希少的価値は少なく、あまり高くないといいうことになる。しかし一方では縄文土器にはほとんどない彩文が描かれているものが多い。その彩文(彩陶の彩)が美しいもので希少価値があればかなり高いものとなる。


例えばこんなもの。文化年代で言えば馬家窯文化のうちの馬家窯タイプのものである。



またこんなものも価値が高いかもしれない。
これも
馬家窯文化のうちの馬家窯タイプのもの。






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